平成26年-平成30年 文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「細胞競合」

計画研究

細胞競合に関与するストレス応答分子の探索

一條班


研究代表者
一條 秀憲
東京大学・教授
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研究概要

 極性崩壊などの形質転換を示した細胞が正常上皮細胞に囲まれると、細胞死などにより正常上皮細胞層から排除される現象である「細胞競合」は、腫瘍形成回避をはじめとした上皮組織恒常性維持のためのストレス応答機構のひとつと捉えることができる。これまで競合現象にいくつかの細胞内ストレスシグナル伝達経路が関与していることが示唆されてきているが、細胞競合に関わるシグナル伝達を担う分子実体やそれら分子同士の関係性については未だほとんど明らかになっていない。本計画研究は、以下の2つのアプローチにより細胞競合に関与するストレス応答分子の探索と解析を行う(図)。
① 網羅的アプローチ(ゲノムワイドsiRNAスクリーニング)
 我々が最近開発したゲノムワイドsiRNAスクリーニング系と藤田らが開発した哺乳類細胞の細胞競合系を融合し、細胞競合の過程において正常上皮細胞もしくは形質転換細胞において機能する分子群を全ゲノムレベルで網羅的に探索・同定する。ゲノムワイドの遺伝子を網羅的にスクリーニングすることで、既存の知見からは想像できない、新たな細胞競合関連分子が得られることが期待される。
② Candidateアプローチ(既知のストレス応答分子の関与の検討)
 スクリーニングにより網羅的アプローチで細胞競合関連分子を探索する一方で、細胞競合に関わることが既に知られている分子からシグナル伝達機構を解析するcandidateアプローチも行う。これまでに、JNKやp38 MAPKなどストレス応答性MAPキナーゼが細胞競合に関与することが示唆されている。我々は以前からこれらMAPキナーゼをストレス依存的に活性化し、細胞死に関わるMAPKKKとしてASKファミリー分子の解析を行ってきている。candidateアプローチでは、ストレス応答分子としてのASKファミリー分子及びその関連分子の関与を検討し、細胞競合のシグナル伝達におけるMAPキナーゼ経路の活性化メカニズムと役割について解析する。

 本研究の達成により、細胞競合を担う分子実体やシグナル伝達機構が明らかになるとともに、将来的にはそれらをターゲットとすることで細胞競合現象を利用した新たながん治療薬の創成にもつながることが期待される。