平成26年-平成30年 文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「細胞競合」

領域概要

【本領域の目的】
 多細胞生命体を構成する細胞社会において、異なる性質を持った細胞間で多彩な「競合」現象が生じることが近年の研究によって明らかになってきた。細胞競合(cell competition)と名付けられたこの現象が、個体発生における組織構築過程、優良な幹細胞の選別、前がん細胞の排除やがん細胞による正常細胞の排除など、多様な生命プロセスに関わることが示されてきた。しかし、細胞競合の分子機構についてはまだほとんど未解明のまま残されている。また、細胞競合マーカー分子がいまだ同定されていないため、細胞競合の関与が見逃されている生命現象や疾患が数多く残されている可能性が高い。そこで本領域では、細胞競合の統合的融合研究拠点を構築することにより、細胞競合を制御する分子メカニズムの全貌を解明し、それらがどのように多細胞生命体の個体発生や恒常性維持に関わっているのか、またその破綻がどのような疾患や病態を引き起こすのかを明らかにする。
【本領域の内容】
 多彩な細胞競合現象の分子機構を包括的に解明し、さまざまな生命現象における機能的関与を明らかにするため、本領域では以下の3つの研究体制を構築する。
Ⅰ) 細胞競合を制御する分子メカニズムの解析
Ⅱ) 高次個体解析
Ⅲ) 数理解析
 各計画研究で得られた知見を領域全体で共有し、相互補完的・協調的に共同研究を推進することにより、領域研究を包括的に邁進する研究体制を構築する。さらに、計画研究ではカバーできない技術・解析系・モデル生物を用いた研究や、細胞競合と疾患の関連を解析する臨床医学などを公募研究の形で取り込み、本領域のさらなる強化・発展を実現する。これにより、細胞競合の分子機構の全貌解明、細胞競合現象の生理的役割とその破綻による病態発現機構の解明、さらには人為的制御法の基盤確立を目指す。
【期待される成果と意義】
 細胞競合を制御する分子メカニズムの全貌が解明され、普遍的に機能する分子が同定されれば細胞競合現象を捉えることが容易になり、新たな生命現象の解明や他の研究分野への応用が飛躍的に進むであろう。さらに、細胞生物学、発生生物学、生理学など基礎生物学の様々な分野や腫瘍学、内科学などの臨床医学に新しい概念と研究スタイルを提供し、我が国の生命科学研究の向上・飛躍につながると期待される。加えて、細胞競合を人為的に制御することにより、がん、再生・移植医療など、様々な医学研究にきわめて大きな波及効果を生み出し、次世代の医療開発につながるものと確信している。